「祝 113番元素」

113番元素の発見では認定をめぐり日本とアメリカとロシアが競い合っていましたが、軍配は日本に上がってめでたしめでたしです。
各地の「宇宙と素粒子のお話」で、そろそろ113番元素に”ジャポニウム”の名前が付くかもしれないと、皆さんにはお話ししていましたでしょ。
テレビなどのニュースで新しい元素の発見は”日本初”のことだと報道していましたけど、実は1908年に小川正孝さんが新元素を発見しているんです。
なので1909年の元素周期表には「ニッポニウム(Np)」と名付けられた元素がありました。現在の周期表で43番の位置です。
ところが、43番元素だと思われてたニッポニウムですが、詳しく調べてみたところ75番元素だったんです。

43番と75番ではずいぶん違いがあるように思いますでしょ。
元素の周期表で縦の列は性質がよく似た「属」の仲間なんです。43番テクネチウムのすぐ下に75番レニウムがありますでしょ(写真)。
結局、小川さんが研究したころは今のように正確な実験結果が得られず、43番元素だと思っていたものが違っていたんですね。それでニッポニウムは周期表から外されてしまいました。

1996年になり小川さんの研究を検証した結果、それは43番とよく似た性質の、43番の下に入るべき75番元素だと判明しまいた。
ところが、時すでに遅し。
ニッポニウムが否定された数年後にはドイツの学者らによって75番元素の発見が認定されて、レニウムと名付けられていました。レニウムなんていう名前だから、てっきりロシア人が発見したんだと思ってましたけど。
それで、周期表には75番にレニウムが入っているため、もうニッポニウムの名前が出ることはなかった訳です。
1908年当時、日本でも正確な実験がおこなえたなら、今でも世界中の周期表は75番にニッポニウム(Np)が入っていることでしょう。残念です。
113番元素が「ジャポニウム」になるか「ニッポニウム」になるか、はたまた「ニシナニウム」になるのか、楽しみにしています。

ところで新元素の命名ですが、94番プルトニウム以降はけっこう安易なんです。
96番キュリウム(ラジウムやポロニウムを発見したキュリー夫妻)
99番アインスタニウム(相対性理論のアインシュタイン)
100番フェルミウム(イタリアの物理学者エンリコ・フェルミ)
102番ノーベリウム(ご存じスウェーデンの科学者アルフレッド・ノーベル)
111番レントゲニウム(エックス線を発見したドイツの物理学者で第1回ノーベル賞を授賞したウィルヘルム・レントゲン)
112番コペルニシウム(地動説を唱えたポーランドの天文学者コペルニクス)
このあたりまではまだ納得できますけども、95番アメリシウムとか98番カリホルニウムって何だ!
そのうち中国も新元素を発見したらペキニウム(ベイジニウム)とかシャンハイニウムとかって付けるんだろうな。やれやれ。

2016/ 1/ 4 16:42

2016/ 1/ 4 16:42