「諏訪古事記 その20」

小谷村でお世話になった小谷温泉の山田旅館は、昔から薙鎌神事の前日に諏訪大社の宮司や薙鎌作りの職人さんたちが宿泊するため、貴重な資料がたくさん残されています。
夕食後、無理をお願いして大女将にお話を伺い、古い書類や歴代の諏訪大社宮司の色紙なども見せていただき、話の途中で”オタリ”の名前はアイヌ語っぽいですねと問いかけたところ、
「先々代(19代目の主人のこと。現在は21代目)が小谷村の”オタリ”はアイヌ語だゆうとりました」
とおっしゃり、やっぱりな。
ただ残念なことに、オタリがアイヌ語だという証拠になるものは何も無いとのことでした。
☆写真1:木造3階建の風情ある山田旅館。帰りに大女将からお土産までいただいてしまい、お世話になりました。

現在の薙鎌は明治17年の製作図によるデザインが2004年(平成16年)に復活していますが、古い薙鎌はヘビをモチーフにしたであろう細いデザインのものです。
残されている資料によりますと、その後はネズミっぽいものから青虫かモスラの幼虫かといったものまであり、近年はアヒルっぽいデザインで移り変わってきました。
ナゼこの形なのか、薙鎌の会の会長さんのご自宅を訪ねてお聞きしましたが、理由は判らないとのことで、だったら誰を訪ねればいいのでしょうね。

諏訪大社では毎年11月8日に「鞴(ふいご)講神楽」という製鉄・鍛冶に関する神事があり、通称「ふいご祭り」と呼ばれています。
今回は諏訪大社の権宮司さんと薙鎌の会の会長さんから特別に許可を得て鞴講神楽に参加させていただきまして、簡単にいえば火に感謝するお祭りでした。
☆写真2:鞴講神楽の直会(なおらい)でいただいたふいご祭り用のお札。横の薙鎌は、厚紙で作って金属っぽいシールを貼った自家製レプリカ。

諏訪には鉄に関する伝統行事を8戸が世襲で継承している地域があり、諏訪大社上社(前宮・本宮)の御柱大祭になくてはならない特殊神事を受け持っています。
それが茅野市玉川神之原(かみのはら)地区の「山作り衆」または「八人衆」と呼ばれる人たちで、御柱を伐採する際の神斧やノコギリ・ナタなどを忌火で焼き清め、それらを用いて通例では雪深い3月に山から御柱を切り出すんですが、今までこの地区に縁がなかったのでそれを欲し望んでいたところ、鞴講神楽でとうとう八人衆のお一人とご縁になれました。これでやっと話を聞くことができます。

なぜ八人衆がその数になったのかは、前宮・本宮の柱が合計で8本だからとも考えられていますが、実際のところはそれもよく判っていないんです。
昨年、諏訪大社が御柱大祭用に発注した薙鎌は39本で。そのうち8本は大祭の前年、上社の御柱に選ばれた木に打ち付けられますが、その後に薙鎌は抜き取られて八人衆に贈られます。
八人衆は神斧などの焼き清め以外にも御柱の見立て(どの木を御柱にするかの選定)や伐採、山之神祭り、火入れ式、御柱迎え、冠落としなど、御柱大祭で一連の行事を担うため、薙鎌贈与は諏訪大社からのお礼なんだそうです。
お会いした八人衆のお一人に立ち話で聞いたところ、ご自宅に古くからの薙鎌が残っているそうですので、ぜひ拝見させていただきたいです。

というわけで、残念ながら薙鎌についてはその起源など判らないことだらけですので、こんなことして遊んでみました。
☆写真3:薙鎌は諏訪大社が商標登録しているため、一般で手に入れることはできません。
ですから写真を実物大までコピーして、諏訪大社から叱られないように少しデザインを変えてから厚紙をくり抜き、さらに表面にいろいろ張り付けたものを並べたらメダカの学校みたいになりました。

2016/ 8/25  8:00

2016/ 8/25 8:00

2016/11/11 22:30

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2016/11/15  0:01

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