日々是白馬村 part 56

都会の電車って12輌とか16輌の編成がスゴい速度でガタンガタンッ・ガタンガタンッ・ガタンガタンッ・ガタンガタンッって騒々しく走り去って行きますよね。しかも数分おきに次から次へと。
こちらでは大糸線が1時間に1本ぐらいガタンゴトォーーン・ガタンゴトォーーンって2輌でのんびり走っていて、しかも時間帯によっては人が乗ってないんですよ、運転手以外は誰も。
そんな世界で暮らしていると世の中のあらゆるせわしない問題点がもぅどうでもよくなってしまい、そうなると今までのように無理して予定に合わせた時間軸で生きるのではなく、時間がこちらの生活リズムに同調して流れてくれるような感覚になってきます。
時間に追われることもないので、平安な景色を前にして何かしら感じたなら好きなだけその場にたたずんでいればいいし、思い出した過去があれば納得いくまで振り返ってみたり、将来に望むことがあるならば自由気ままに想像を掻き立てて、満足したら帰る。
そんな日々なので都会に暮らしてたころの時間軸とは異なる別次元の時間軸で過ごしてるような錯覚に陥ってます。それは時間軸に刻まれた目盛りの細かな単位が必要なくなったと表現すればいいのか、季節単位で時間の流れを感じていれば事足りてしまうというような。いや、季節単位はちょっと大げさで週単位ぐらいかもしれないけど。
村に咲く花が週単位で次々と変わり、タチアオイが咲いて喜んでいたら翌週にはノウゼンカズラやアジサイが咲き始め、次の週になるとムクゲの花が真っ盛り。先週までは見かけなかったヒマワリもちらほら咲き始め、ネムノキはピンク色の花が心地よい香りを漂わせてくれて、そんな花々の移り変わるリズムが時間軸の最小単位になってます。
次の週にはコスモスかあるいはオニユリか。蕎麦の花が畑一面に咲き乱れる方が先かもしれませんが、こんな景色を見ながら大自然と呼吸を合わせていれば同じ感覚になってくると思いますよ、多くの人は(写真 1・2)。

それにしてもタチアオイやムクゲの花は一見すると南国のハイビスカスにそっくりで、雪国なのにナンデヤネンと悩んでいたんですけど、図鑑で調べたらどれもアオイ科でした。
タチアオイやムクゲがハイビスカスに似てるのか、それともハイビスカスが他に寄せているのかはまだ解決してませんけど。
そもそも自分の生活リズムがこれほど花に影響されるようになるとは名古屋にいるころは考えたこともありませんでした。まったく驚きです。
タチアオイの森?を突き進むハチ(写真 3)。

生活の中で意識する時間軸の目盛りが粗くなっているのは安穏であることに違いありませんが、ときどき都会の便利さが羨ましく思えることもあります。
例えば話題の新作映画をすぐには観に行けないこと。
例えばミスタードーナツの新商品を今すぐ買いに行けないこと。
例えば大きな本屋で飽きるまであちこち物色できないこと。
例えばCoCo壱番屋は安曇野にしかないのでココイチ風に似せて作ったカレーでも食べるとがっかりしてしまうこと。
例えば新しいジーンズが欲しくても松本や長野の中心街まで行かなければならず、そうなると半日仕事になってしまうこと。

名古屋にいたころ映画館は車で20~30分の距離にシネマコンプレックスが3ヶ所あったし、ミスドも大きな本屋もココイチもジーンズ屋も東西南北どちらへ行こうが5分10分で着きました。
ハチのトリミング、歯医者、純米酒が豊富な酒屋、輸入車の修理を引き受けてくれる修理工場、何をするにも名古屋ではすぐ近くで済ませる事ができましたから。
もし今、東京の大型書店へ行ったら8時間ぐらいは余裕で過ごせるし、ついでに神保町の古本屋街と御茶ノ水の楽器屋通りをブラブラしたら3泊4日の旅になるでしょう。

白馬村は人口がわずか8千500人程度ですけど地価上昇率が日本一の超人気な観光地だから食料品スーパーが3軒、コンビニは5軒、ドラッグストア2軒、ホームセンター1軒、ガソリンスタンドも5軒あるし、飲食店に至ってはあまりにも多すぎて役場でもその数が把握できてないそうです。
なので日常生活は特に不便ではないんですけど要望もあります。
スーパーは品揃えがわりと充実しているので助かりますが、こちらの豚バラ肉は分厚い。豚汁とか焼きそばに入れる豚肉はもっと薄っぺらくないとダメです。生姜焼きじゃないんだから。
あと、ハンバーガーのパテ用に牛100%の挽き肉を探しても豚と牛の合わせばかり。牛100%はたまにしか並んでないのも困る。ちなみにハンバーガー用のバンズはローソンのLチキ用バンズが一番です。
お刺身は富山県や新潟県が近いわりには種類がやや少なめなのが残念なんですけど野菜は安い。
ラディッシュは今年も激安で、こんなに入って150円なのでこの日は両方買いました(写真 4)。

それにこの季節はブルーベリーがとびきり安くて、小さなパックでも都会のスーパーだと480円ぐらいのが農協では200円とか250円。先日は800円のバカでかいパックを買ったら食べても食べても減っていかず、半分は冷凍にしました。
それに、近所のおばちゃんの畑ではブラックベリーがそろそろ色付き始めていて、おばちゃんから取り放題許可をいただいてるので今年もブラックベリーでしっかりビタミン補給します。

そんな訳で時間軸の細かな目盛りが必要なくなった話からずいぶん脱線してしまいましたが、ハチとの散歩があってこそ時間軸の最小単位がゆるやかになったのかもしれません。ハチのお蔭です。
お花畑の隙間を散歩中のハチと、夕陽をあびて眠たそうなハチ(写真 5・6)。