恐怖の悲惨相続

我が家の悲惨な遺産相続を、略して悲惨相続と呼んでいます。
他人事だと思って読んでいただければ面白いでしょうから、詳しくお話しいたします。

3年ほど前、父が年老いてきたので相続税がいくらぐらいになるかを調べてみました。
遺産といっても相続するのは現金でなく土地です。現金はありません。
区画整理が始まる前までは田んぼや畑だった土地のことで、これが大問題なんです。
というのも、無料相談会があったので参加してみたところ、かつての田んぼや畑を現在の路線価に換算して相続税を計算してもらったら、お宅の資産は約4億円になるので、えー、控除を引いて………相続税はと………大体ですが1億5千万円になりますね、って。
ナニ言ってんのこの人?
出川哲朗さん風に言いえばこうでしょ。
お前はバカか!

実際の土地の状況を考慮すればそれより2割ほど少ない金額になるとは思いますが、父の通帳残高は600万円だけ。で、1億5千万円もどうやって払うんだ、っちゅうの!

えっ?、土地を売ればいいじゃないか、って?
そうですよ。売れるなら売りますよ。すんなり売れるならこれほど苦しみませんでした。
というのも区画整理中のため、その土地の使用収益が禁止されていて、つまり家を建てたり駐車場にしたり店舗にして商売したりしてはいけないんです。固定資産税だけは毎年払っているのにです。
しかもそれがもう25年以上も続いていて、狂ってますよね。
土地を買った人も同じ条件なので、そんな土地を誰が買うかってこと。あなたは買いますか?
使用収益の解除だって10年先になるか20年先になるかも判らないし。マジで狂ってる。

2021年の12月に地域の総会がありまして、区画整理組合の組合長から直々に依頼があったのでボクが総会の議長を務めました。地域のためになればと思い引き受けたわけです。
そこで決まったのが、区画整理の終了は2048年になるのだと。アホだ!
2021年当時ですでに始まってから25年以上も経っているのに、まだあと27年もかかるんですって。
ジジイたちは全員死んでるからな。
そんなわけで、土地が売れる理由などひとつもありません。

腹が立つことに、我が家で一番いい田んぼだった2反半(750坪)は区画整理で持っていかれ、今ではそこにコストコが建っていやがります。バーローめが!
減反は50%だったので、替え地として370坪ほどを他の土地でもらいました。
しかしその土地は沼地で、しかも弥生遺跡が出てきました。銅鐸なんかが出たらワクワクするんですが、特に歴史的価値もあまりないようで遺跡の調査は終了しました。だから売ってもいいんですけど、何ともならないでしょ。
詐欺と呼んでもいいと思いますよ。
せめて縄文遺跡なら公園にしてやったのに。
そんな土地でもしっかり路線価が上がって相続税も高額になるため、とにかく資産を減らさなければならず、その370坪の土地と、少し斜面になっている草むら530坪の土地、合わせて900坪を一坪あたり3万円で売りました。一応ここは名古屋市内なんですけどね。

買い手を探したんですが、区画整理中のため大手の不動産屋はすべて断られまして、地域の不動産屋にお願いして無理やり買ってもらいました。
区画整理が終われば一坪が30~40万円ほどの価値になる土地が坪3万円ですよ。白馬村より安い!
まったくもってアホくさい話ですが、そうでもしないとその900坪に対しても相続税が3千万円ぐらいになる可能性があり、仕方がありませんでした。
それで、そのときはまだ父が生きてますので父の通帳に2700万円が振り込まれまんですが、それから数ヶ月後、2022年の年が明けて2月に父は他界しました。
昨年の不動産取得税で2700万円の20%を父の口座から支払い、さらには昨年の父の所得が土地の売買で高額になったため市民税・県民税が約150万円。それに固定資産税と葬式代で父の残した預金600万円はすべて使い果たし、残った土地代は相続税に当てますが、それではまったく足りません。
そこで税務署と戦ってくれる税理士・土地鑑定士・司法書士の出番になったわけです。
この人たちが助けてくれたので、我が家は無理心中しなくてすみました。
税理士・土地鑑定士・司法書士にかかった費用は総額650万円でした。ビックリしますでしょ。
けど、この人たちのお陰で相続税が5千万円ぐらいは減額されたでしょうから、650万円の経費は決して高くないんです。
それで土地売却の残金約2100万円に、ボクと弟と健太の預金をすべてかき集めて、さらには父が区画整理前に建てた貸し店舗の家賃で手付かずになっていた約1年分を合わせて、とにかく税務署に3500万円を支払いました。
残りは約2000万円で、それは分納します。
けど、父が建てた貸し店舗もまだ借入金が2000万円ほどあり、合わせて4000万円の借金が残りまして、これが我が家の悲惨相続の実状です。面白かったでしょ、他人事だから。
おめでとうございます。ありがとうございます。何がやねん。

ただし、父が生きているうちに健太を父の養子縁組みにしておきました。孫は相続できないですからね。なので戸籍上で健太はボクの弟になってます。
ボクは父から何も相続してないので、ボクが死んでも健太は悲惨相続をしなくてもよくなりました。
それで、土地や貸し店舗は健太が相続することにして、ですから4000万円の借金もすべて健太が引き受けてくれたわけです。
幸いにも地区の中のごく一部で特別に商業化が許可された区画がありまして、昨年8月に大型の中古車屋がオープンしました。そこからも家賃が入ることになったため、健太の借金は10年ほどかけて家賃でギリギリ払えそうです。10年では無理かもしれませんけども。何しろ商用地になった途端に固定資産税が爆上がりするし、家賃所得があるということで所得税も市民税・県民税も健康保険も恐ろしい額の請求がくるでしょうから。
それに、相続税の分割支払いは所得額から経費として引くことができないため15年かかるかもしれません。
他にもまだいくつも問題があるんですが、腹が立ってきたのでもうやめておきます。
以上、我が家の楽しい悲惨相続でした。

というわけで、ボクはさっさと長野県民になりたいのですが、わずかな貯蓄を相続税ですべて使い果たしてしまったため、長野県が遠い。
けどそれも悔しいので、来月には借家探しを再開します。