「IS(イスラム国)」関連

「ISIS(またはISIL)」を”イスラム国”と訳すのは誤解を招くのでさっさと止めてもらいたかったんですが、どうやら「IS」で落ち着きそうです。
そうでないと、同じイスラム過激派の「ヒズボラ」は”神の道”なんていう極めて誤解を招く名前だし、スリランカの独立派反政府勢力「LTTE」をいちいち”タミル・イーラム解放のトラ”と呼ばなければいけない。
クルド人勢力の「PUK」なんて日本語では”クルド愛国同盟”になって、それはいったいどんな組織なのか悩んでしまう。
ロシアの反ユダヤ・ロシア国粋主義の「RNFP」は”パーミチャ運動ロシア人民戦線”ですよ。名前だけ聞くと可愛く感じてしまうのが恐ろしい。
はい、ISです。

「遷都高天原」の237~238ページをご覧ください。
飛騨神岡の居酒屋で、すでにロバートが健太に伝えています。アメリカ政府は中東で反日感情をつくりあげると。
同時に日本で反イスラム・反アラブ感情を沸き立たせるため、中東のどこかで日本大使館を爆破するか、手っ取り早く観光客かビジネスマンを人質にとった後に殺害する、と。

それでアベは集団的自衛権を行使する大義ができるわけで、ロバートはナニ者なんでしょうか?
一応は元NSA(国家安全保障局)の職員ということになっていますが…………
※ただし、ロバートが健太に伝えたことと後藤さんらの事件をイコールとしているわけではありません。

ISの台頭はイラクからサダム・フセインがいなくなったことに起因します。
スンニ派を優遇していたサダム・フセインは、ありもしない大量破壊兵器を所有していることにされ、英米の陰謀によって殺害されました。
とはいえ、サダム・フセインのような独裁者にとっては自ら招いた結果ですので仕方ありませんが、皮肉にもイラクに自由と安定がもたらされるどころか国内はかえって混乱してしまい、それがISの暴挙につながっているわけです。

イラクのサダム・フセイン大統領、リビアの狂犬カダフィ大佐、シリアのアサド大統領(これは父アサドのことで、現在のアサド大統領は息子アサド。個人的には父アサドの死後、息子アサドに期待をしていましたが、父アサドと同じで何ともならない。なのでアサド打倒を掲げるイスラム戦線を支持しています)、この連中がいなくなれば中東に平安がもたらされると思っていたのですが、そんな希望ははかなく消えました。

中東地域では、もしISが壊滅したとしても残念ながら激しい戦闘状態は続きます。
現在はISと戦っているイスラム戦線ですが、ISが消滅すればすぐにアサド政権打倒に戻りますし、クルド人勢力もIS消滅後は再びクルド人国家の樹立に転ずるでしょう。
クルド人は現在約3千万人ほどいますが、これほどの人口をかかえながら国家を持ってない民族は地球上で唯一クルド人だけですので、当然といえば当然の動きです。

また、イスラム教徒同士もシーア派vsスンニ派の争いは終わる様相がなく、さらにパレスチナの問題やイスラエルの対応など、中東の混乱はISだけに限ったことではありません。
狂犬カダフィがいなくなったリビアでもISに忠誠を尽くす勢力が、エジプトのコプト教徒(原始キリスト教)21人を殺害しまして、リビアもカダフィがいたときの方が安定していたとは、なんという皮肉なことでしょう。

ところで中東をナゼ中東(ミドル・イースト)と呼ぶのかご存じでしょうか?
太平洋と日付変更線が真ん中に来る世界地図を使っていると理解できません。
日本人の国際感覚の無さは地図帳の世界地図が一因になっています。
どうか一家に一枚、日付変更線で開いた世界地図を。
すると日本や韓半島がナゼ極東と呼ばれているかも判ります。
そして世界情勢を理解するのにはこれが一番大切なことでして、日付変更線開きの世界地図におけるヨーロッパとアメリカ合衆国(特にニューヨークやワシントンなど東海岸)の位置関係です。
日本で使う世界地図ではヨーロッパとアメリカ合衆国は西の端と東の端で、ずーっと離れています。
しかしワールドスタンダードの世界地図を見れば、ヨーロッパとアメリカ合衆国(の東海岸)はそれほど遠くありません。
ヨーロッパや北アメリカ大陸の白人キリスト教徒が、地球の果てに暮らす極東の黄色人種を対等に扱うかどうか、本気で友好関係を保ちたいと思っているかどうかも一目で判断できることでしょう。

日本はトルコとイランを大切にしておかないと知らないよ。