白馬は巨大な山脈の麓に広がる村ですから水が豊富で、いたるところを水路が流れているんです(写真 1)。
いや、水路というとイメージするのは“水の町”とか“水の都”と呼ばれるような、例えば奥美濃の郡上八幡だったり、夏場には色とりどりの鯉が泳ぐ飛騨古川のような風情ある水の流れを思い浮かべてしまいますが、白馬村の場合は側溝です。どこの街にもある側溝なんですが、北アルプスから地表を流れてくるのか湧き水なのか、とにかく水量が多くて、しかも下り坂を勢いよく姫川へ向かうため流れが速いんです。場所によっては激流で、小さな子供なら流されると思いますよ、この勢いだと(写真 2)。
アパートの裏の狭い砂利道にも側溝があります。溝の幅は25㎝ぐらいなんですけど水深は15~20㎝ほどあって、流れも速いです。ですが、両側から草に覆われているため当初はそこに側溝があるとは気付いてませんでした。
ハチは、本気の散歩以外にもちょくちょく外へ出していまして、このときはアパートのすぐ裏なのでリードを付けずに歩かせていたんです。
すると草にお尻を向けたハチがふんばり始めたので、ボクは慌ててお散歩バッグからウンチ取り紙を出そうとしたんですが、そのとき初めてハチの足元を水が流れていることに気付いたんです。
しかもハチの右後ろ足は地面から半分ほど側溝にはみ出ていまして、ハチはそこに側溝があることを知っていてギリギリの場所でふんばっているのか、それとも気付いてないのだろうか?
そんなことを思った次の瞬間です。ハチが消えました。ザブンという音とともに。
わーっ、ハチーっ!
たしかにハチは側溝へ落ちたんですが、覆いかぶさる草でハチの姿は見えません。
ボクは砂利道の下流方向へ思いっきりダイブして、おそらくこのあたりに側溝があるであろう草むらの中へ両腕を突っ込みました。
すると2秒後ぐらいにハチが流れてきたので慌てて抱きかかえ無事に救出。すぐさまアパートの風呂場へ直行しました。
ハチは首から上が濡れておらず、足から落ちてそのままの姿で流されたようなので怯える様子もなく、キョトンとした顔でボクを見つめていました。ヤレヤレ。
ハチが落ちた側溝(写真 3)。実際に落ちた場所は水の流れがほとんど見えないため、草が少ない場所を写してあります。
ぼく(ハチ)、ここへ落ちたんだよ(写真 4)。
あのとき、もし側溝の存在に気付かないままお散歩バッグに視線を移していたら、知らないうちにハチがいなくなっていても、ボクは路上をあちこちキョロキョロ見回してハチの姿を探していたことでしょう。あれっ、ハチっ、どこ行った?
けどもしそうなっていたらハチはすでに流されているわけで、本当にあのとき側溝に気付けて良かったし、夜じゃなくて幸いでした。
移住2日目、昼下がりのハプニングでした。
3日後ぐらいにヒジが痒かったので何気なしに触ったら、小さなカサブタがたくさんありました。
んっ、どうしてこんなところにカサブタが?
そうか、あのときの砂利道ダイブだ。