日々是白馬村 part 48

今シーズンも白馬村は外国になっています。
スキー場に近いエリアや白馬駅周辺は日本人がマイノリティになっているため英会話の勉強にはなりますが、銀行や郵便局で流れてる噂によると来年から村の通貨がオーストラリアドルになるとのことです。住所もオーストラリア国の北半球州白馬村自治区に変わるため、日本から手紙を出すにしても北海道のニセコ町と長野県白馬村は国際郵便扱いになるのでご注意ください、って。村民の国籍はどうなるのでしょう?

この季節は積雪のため農道や細い抜け道が通れません。なのでハチの散歩はまず白馬駅へ向かいます。
それがたまたま昼前だったりすると11時42分着の“特急あずさ”から無限に吐き出されたガイジンが一帯を占領するため、敗戦国の植民地のような様相を呈しています。新宿からの直通はこれ1本だけなので他の時間は平和ですけど。
それと、これほど多くの人が狭い空間に密集しているのを見るのは近年だとオンバシラ祭り意外にはない。
“特急あずさ”の到着後、しばらくしてやや落ち着いてきた駅の改札口前(写真 1)。

この“特急あずさ”ですけど、新宿発が8時ちょうどのくせして“あずさ5号”なんです。“2号”でなくてごめんなさいね。
8時ちょうどなんだから“あずさ2号”じゃなきゃダメに決まってるでしょうよ、JR!
けどJRにも都合があり、現在の“特急あずさ”は上り列車に偶数番号を、下り列車には奇数番号を付けてるので、信濃へ向かう下り列車を“2号”にはできないんですって。
ところがですよ、長野県内の一部では“(8時ちょうどの)あずさ2号”を復活させようとの動きがあり、3月23日には松本市で狩人を招いたコンサートが開催されますし、コンサート前には県民による「あずさ2号 のど自慢大会」もあるそうで、これは決起集会ですね。
県民は本気のようですぞ。さぁてどうする、JR。

オンバシラ祭り並みに人が密集する駅前を通り抜けるにはひと苦労なんですが、ハチには楽しい時間になってます。
だいたい同じ会話が毎日何度か繰り返されるんですが、ハチを見つけると近寄ってきた白人のお兄さんお姉さんおじちゃんおばちゃんは決まって
「おー、キュートね。写真撮ってもいい?」
「名前は?」
「歳はいくつ?」
「足が悪いようだけどどうしたんだい。怪我でもしたのか?」
と来るわけです。英語が話せなくてもその程度なら理解できる。

なのでこちらも
「どうぞ撮ってください」
「ハチです」
「15歳になります。15歳と7ヵ月」
「彼は後ろ足を悪くしてしまって、膝が痛いんだ」
※(膝の靱帯が伸びたので膝関節が外側に曲がってしまったと説明する英語力はない)
「だから自分自身では歩けないので、ボクがこうして後ろ足を吊り上げて歩くのを手伝ってるのさ。それでも彼は散歩が好きだから、晴れた日は前足だけで1日に4~5㎞も歩くんだぜ」

すると
「吊り上げるのは素晴らしいアイデアだね」とか
「ワーォ、彼は小さいのに強いんだなぁ」とか
「スケートボードに乗せて散歩したらどうだい」とか
「あなたにとってもエクササイズになるわね」とかで会話は終了するんですけど、一度だけ
「美しい」って白人男性に真顔で言われたことがありました。
何が美しいのかと思いきや
「彼(ハチ)に対する君の愛とサポートは美しい」のだと。すごい表現をされますね。ありがとうございます。

ガイジンと話していて一番の問題は、途中で何か質問されても聞き取れないのでそれ以上の会話が続かなくなってしまうこと。
昨日も白人女性とハチの後ろ足について話していたら、missingという単語が出てきました。帰ってから辞書で調べたけど話の内容と使い方が結びつかずにもどかしい。
missingを「(膝の機能が)欠けている」とか「(歩く能力を)紛失した」という意味で用いたのでしょうか。

実は同じアパートに自室で英会話教室をしている先生がいます。
ボクも習いたいので尋ねてみたところ、対象は小中学生だけらしくジジイはダメでした。
こうなったら白馬村へ移住してきてるガイジンと仲良くなり、整体で悪いところ痛いところを治してあげるから英会話を教えてくれないだろうか。物々交換みたいに。

駅前を抜ければ平和で静かな村に戻り、すれ違う人も半分ぐらいは日本人なので捕虜にされる心配は消えます。
ハチは他の犬のニオイをクンクンしながら道の隅っこを歩きたがるんですけど、上(建物の屋根)を気にせず歩いているとこの季節は落雪に潰されてハチもボクも死にます。狭い道はこんな状態なので(写真 2)。

民宿の屋根から垂れ下がるツララで、ツララ選手権“細長い部門”の優勝候補を発見。長さは3メートルほどありこの路地では強者ですが迫力に欠けているため、これでは村の代表として全国大会に出場することはできないでしょう(写真 3・中央付近)。

立春後の寒波で積雪はさらに増え、こちらのお宅はどこからどうやって入っているのでしょうね(写真 4)。